スレート屋根【カラーベスト】が劣化した時の補修方法は?
「窓から屋根を見ると薄い屋根材を使用していて、数カ所で割れているように見える」
「屋根材の表面が全体的に黒色や茶色に汚れてきている」
「二階からと思うが、カラーベストの一部が地面に落ちていた・・・」
スレート屋根には様々な種類がありますが、今回は一般住宅で多く使用しているスレート屋根材の【カラーベスト】が傷んだ場合、補修方法とどのような考え方があるかをお伝えします。
カラーベストが劣化してくると、{屋根材のヒビ割れ・割れ・屋根材の落下・表面塗装の劣化・雨漏り}など屋根の不具合が出てきます。
雨漏りや屋根材の落下があれば早急な対応が必要ですが、多少劣化している状態でも雨漏りしていなければお客様の要望により工事を行わない事もあります。
このブログの中で、ご自宅の屋根の状態に当てはまり「このような補修方法や考え方があるのか」と参考にしていただければ幸いです。
目次
- カラーベストとは?
- カラーベストが劣化した時の補修方法
①表面塗装が劣化した時の補修方法
②ヒビ割れ、瓦が落下した時の補修方法
③雨漏りした時の補修方法
- 見た目は劣化しているように見えるが、本当に補修は必用?
- 終わりに
カラーベストとは?
セメントと繊維系材料で成形して、一枚当たりの厚みが5mm~6mmの薄い屋根材です。
一般住宅に多く使用している屋根材で、2004年頃より以前に使用しているカラーベストにはアスベスト(石綿)が混入しています。
アスベストが混入している可能性のある屋根材なので、{屋根の葺き替え工事・重ね葺き(カバー工法}などの工事を行う前には、専門の講習を受講して合格した調査士による{屋根の事前調査・各都道府県への工事届け出}が令和5年10月から法令により義務化されています。(工事規模によっては届け出が必要ない場合もある)
カラーベストが劣化した時の補修方法
経年劣化により様々な屋根の不具合が出てきます。
そのような時にどのような補修方法があるかを以下に挙げます。
①表面塗装が劣化して、全体的にカラーベストが汚れている
下の屋根は全体的に表面塗装が剥がれて、黒色や茶色の汚れが付いています
カラーベストの表面に塗っている塗装が経年劣化で少しずつ薄くなり、表面がザラザラになってきます。そのようになると新築時と比べると屋根材上の雨水の流れが悪くなるので、黒色や黄色のような水垢や苔が付着し易くなります。
【補修方法】
{塗装工事}
表面の汚れを高圧洗浄で落としてから、カラーベスト用の塗装材を塗ります。
屋根の高圧洗浄後
塗装の工事中や工事後には、カラーベストの繋ぎ目に詰まっている塗装を取り外す必要があります。この重なり部分の縁切り工事を行わなかった場合、後日に雨漏りや下地木材の腐食を引き起こす可能性が高くなります。
適切な工事を行わない場合、上の写真のように屋根材の重なっている内側に雨水が溜まっていました。
本来はそのような水は瓦の繋ぎ目から自然に外に出ていくのですが、水の抜ける出口に塗装を詰めているので、排水できない雨水は屋根材の裏側に回る事で雨漏りを引き起こしていました。
屋根塗装中
上の写真ではカラーベストの繋ぎ目部分に塗装が埋まっているので、カッター等で内側に入る水を外に出すための縁切り工事を行っていきます。
*注意が必要!
現状で雨漏りしている場合は、塗装工事を行っても止まりません。
雨漏りを止める補修を行い、雨漏りが止まってから塗装工事を行ってください。
{工事を行わない}
表面上の汚れや屋根材が薄くなっているだけで、雨漏りしていなければ工事を行わず、そのままの状態にしておくという選択もあります。
②ヒビ割れ、又は割れた事で屋根材が劣化してくる
カラーベストが剥がれて下に落ちかけています
カラーベストの経年劣化や新築時の施工不良で材料の【ヒビ割れ・屋根材の落下】などの不具合が出てきます。
築10年~15年のほぼ新築状態の屋根でも、工事店の施工不良が原因で二階屋根から一階の地面までカラーベストの一部が落下するケースを度々お聞きします。
屋根材が地面まで落下してくる相当危険な状態なので、早急な対応が必要になります。
【補修方法】
{割れたカラーベストの差し替え工事}
割れているカラーベストを取り除き、同様のカラーベストに入れ替える工法です。
*注意が必要!
古いカラーベストを取り除く時に材料の破片が瓦の内側に残っているのですが、その破片を取り除くために釘を引き抜く必要があります。その釘を無理矢理に抜くと防水下地材を相当痛めて、屋根の防水機能が下がる事があります。
{必要な部分に板金を被せる}
ステンレス製の板を割れているカラーベストの上に被せる工法で、補修に必要な工事を{早く・安全に・安価に}行う事ができます。
カラーベストの補修時に防水下地材を傷める事はお勧めしません。
割れた時の場合は、当社では差し替え工事を行わず写真のようにステンレス板を被せる工事を行っています。
{棟板金が強風により剥がれ落ちた場合の補修方法}
台風による強風で棟板金が剥がれました
台風などの強風時に棟板金が剥がれる事があります。
原因は板金材の下に入れている下地木材の劣化により釘が抜けやすくなり、釘が効いていない状態なので板金材が外れ易くなっています。
補修方法は下地木材を入れ替えて、外れた棟板金が傷んでいれば新しい棟板金を使用してビスか釘で固定し直します。
棟板金の補修後
③カラーベストの重なっている部分に埃や汚れが詰まって、雨漏りを引き起こす
家の近くに森や竹林があると枯葉が屋根上に落ちて、カラーベストの重なっている隙間に入り込むことがあります。その状態で年月が経つと屋根材の内側に枯葉や汚れが詰まっていき、雨漏りの原因になります。
また、不適切な屋根塗装を行った場合でも雨漏りする事があります。
{補修方法}
{雨漏りしている上部の一部葺き直し工事}
雨漏りしている上面の必要な部分のみを葺き替えする工法です
全面の葺き替えを行うと工事費が大きくなるので、「雨漏りを止める必要な工事のみを希望」する場合、このような工法を行います。
{屋根全面の葺き替え工事}
施工前
現状のカラーベストを取り除き、下地木材が痛んでいる部分があれば必要な木工事を行い、新しい屋根材に葺き替える工法です。
施工後
古いカラーベストにはアスベストが入っているので、工事前に専門の調査士による調査と各都道府県への工事の届け出が必要になります。
{屋根材の重ね葺き工事(カバー工法)}
横葺きの板金屋根材(スーパーガルテクト)
現状のカラーベストの上に防水下地材を貼り付けて、{横葺き又は縦葺きの板金屋根材}を葺く工法です。
葺き替え工事と比べるとカラーベストの撤去処分費が無くなるので、その分の費用を大きく抑えることができます。
*注意が必要!
*下地木材が痛んでいると新しい屋根材を固定するためのビスが全く効きません
雨漏りしている場合は下地木材が痛んでいる可能性が高いので、下地木材の取り替え工事などの必要な補修を行ってからカバー工事を進めてください。
見た目は劣化しているように見えるが、本当に補修は必用?
「補修するか・補修しないか」を決める事が難しい場合があります。
表面上は確かに汚れているが、雨漏りが無い状態で30年~40年と家を守り続けているカラーベストの屋根もあります。
築35年ほどの屋根です。少し劣化していますが、大丈夫な屋根です
ヒビ割れや雨漏りしていなければ工事を行わず、この先、雨漏りなどの不具合が出てきた時に工事を再検討します。
「屋根の補修が必要かな?」と感じた場合、ご自宅の今後についてどのような考え方を持っているかにより、屋根工事が「必要か不必要」なのかを判断できると考えています。
例えば、あと数年で引っ越しを考えている場合、雨漏りしていない限り工事は全く必要ないです。
しかし、今後10年20年と住まれる場合は、現状のカラーベストがその年数までの耐久性があるか疑問なので、今後の事を見据えて大掛かりな工事が必要かもしれません。
終わりに
お客様と打ち合わせしていて、このようなお話をよくお聞きします。
「自宅に子どもや孫が帰ってくるならば、話が早いけど…」
「屋根がまだ大丈夫ならば、まずはキッチンや台所を何とかしたい」
「屋根が傷んでいるのは分かっているが、家には私一人しか住んでいないし…」
屋根の様々な状況による工法を挙げましたが、お客様の要望や住環境により補修方法は大きく異なります。
「このような場合はどうすれば良いかな?」と屋根に対する疑問点がありましたら、ご遠慮なく当社までお問い合わせください。