スレートのカバー工法とは
近年「カバー工法」という屋根のリフォーム工事が多くなっています。
カバー工法にも様々な工法と屋根材があるのですが、今回はカラーベストの上から板金材(横葺き材)を使用した工事内容について挙げていきます。
カバー工法の施工例
現場の写真でカラーベストの上から板金材を重ねて葺く{カバー工法}の工程を挙げていきます。
施工前
現状のカラーベストが雨漏りなどで劣化がしていないかを確認します。
*下地木材の劣化がある場合は一部のカラーベストを取り除き、下地木材を取り替える等の補修工事を行います。
防水下地材工事(ルーフィング工事)
既存のカラーベストの上から裏面粘着の防水下地材を取り付けます。
防水下地材(改質アスファルト系)を全面に貼ります。このルーフィングは粘着性が高いので既存のカラーベストにしっかりと張り付きます。
板金材葺き
当社で現在使用しているのは、アイジー工業㈱のスーパーガルテクトです。
板金材はもちろん軽い屋根材なので、ビスを使って固定します。このビスはカラーベストを貫通させて、カラーベストの下にある下地木材に効かせます。
施工後
施工前のカラーベストよりも屋根材の厚みが出る仕上がりになります。
葺き替え工事の施工例
既存のカラーベストを取り除いた場合、その分の軽量化は大きくなります。
「軽量化を図りたい・今のうちに石綿(アスベスト)が入っている屋根材を取り除きたい」等の様々な要望により、葺き替えを希望される場合もあるので{葺き替え工事}についても挙げます。
現状のカラーベストを撤去処分
カラーベストを固定している釘を抜いて、一枚ずつ丁寧に取り除きます。
防水下地材工事(ルーフィング工事)
カラーベストを取り除いた後に、下地木材が痛んでいる部分は取り替えます。
下地木材に問題がなければ既存の下地木材の上に防水下地材を取り付けます。
板金材葺き
下地木材と板金材がしっかりと固定するようにビスで固定します。
施工後
最初の工程は大きく違いますが、写真のように葺き替え工事もカバー工法も同じ仕上がりになります。
カバー工法のメリット
葺き替え工事に比べて費用が安くなる
大きなメリットとしては工事費用を抑えることができます。
{葺き替え工事}を行う場合は、既存のカラーベストを取り外して処分するのでその分の費用が掛かります。
例えば屋根面積が100㎡の場合、カラーベストの撤去処分プラス諸経費を含めると、現在4500/㎡程の単価になるので、45万円+税の費用が掛かります。
今回の{カバー工法}は現状のカラーベストを外さずに工事を進めていくので、カラーベストの撤去処分費用や諸経費が掛からない分、工事コストを抑えることができます。
家の断熱性が上がる
*断熱効果が上がるのは断熱材が入っている屋根材に限ります。
工事後にお客様から「以前は階段で二階に上がっていく途中から暑く感じていたが、今は以前よりも部屋が暑くない!(真夏時)」と、多くお聞きします。
屋根材の裏側には断熱材があり工事後には屋根面全てに断熱材が入る事になるので、断熱効果が上がると考えます。
また、当社では屋根の一番上にある棟部に{換気材}を入れます。
換気材を取り付ける下地部分です。下地木材の一部を細長く開口して、屋根裏の空気を出します。
棟換気材(自然換気)を取り付けます。
カバー工法により、現状のカラーベストの上から屋根全面に新しい屋根材を葺くことになるので、屋根裏の空気が密閉しないように外に出す必要があると私は考えています。
軒裏や壁面にある既存の換気材と合わせて屋根上に新しい換気材を取り付ける事で、昼間に溜まる屋根裏の暑い熱気を外に出してくれる効果があります。
カバー工法の注意点
カバー工法を行う場合は注意点があります。
雨漏り等で下地木材が痛んでいる場合は、木材補修が必要
事前調査で雨漏りなどによって屋根下地木材が痛んでいないかどうかを確認する必要があります。
下地木材が痛んでいる状態で板金材を葺いた場合、板金材を固定するためのビスは傷んでいる木材に打っている事になります。その場合、工事後に強風によって浮く事があります。
そのような事が起こらないように、事前の下地木材のチェックは必ず必要です。
写真のように下地木材が痛んでいると、板金材を固定するためのビスが効きません。
傷んでいる下地木材を取り除きます。
構造用合板などの下地木材を取り付けて、ビスがしっかりと効くようにします。
このように下地木材が痛んでいる場合は一部カラーベストを取り除き、傷んでいる下地木材を新しい木材に取り替えてからカバー工法に進みます。
家自体を解体する時にはカラーベストの撤去処分費が掛かる
これは可能性の一つとして長い先の話にはなりますが、現在住んでいる家を解体する場合についてです。
今から何十年後となると、様々な環境変化により引っ越しや家の解体の話が出てくる場合があります。その時にはカバー工法で葺いた板金材と、その下にあるカラーベストも撤去する事になります。
カラーベストの撤去処分は年々費用が高くなり、撤去処分についても新しく様々な規制が掛かってきています。
そのような背景があるので、現在でもカラーベストの撤去処分の費用が高いのですが、いまから数十年後となると費用がさらに上がる可能性は高いです。
その時{板金材とカラーベスト}二重の屋根解体費がどうしてもネックになります。
私の仕事柄、様々なリフォーム工事や家の解体工事を見てきています。
お客様のご希望がもちろん一番大切ですが、上記の事も片隅に覚えていただければ幸いです。
終わりに
現在の状況を考えて{カバー工法}を行う、又は将来の費用を抑える・軽量化のために{葺き替え工事}を行う。どちらの工事を選択するかは、難しい判断になると思います。
当社では屋根の状況を見てお客様と打ち合わせを行い、お客様のご希望に沿う工事方法を提案します。
屋根工事に関して疑問点や不安、様々な要望があると考えます。相談だけでも当社へお気軽にお問い合わせください。